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「夢空間」。ラブホテルとは、非日常的空間。異次元の世界を演出した、エンターテイメントなカップルのための小劇場である。 

連れ込み宿・逆さクラゲ・温泉マークと呼ばれた時代、いまだ、「ラブホテル」と言う言葉がない頃、私はこの業界に足を踏み入れた。その頃は、まだまだ、住宅事情も貧しく、発展途上にあった。しかし、東京オリンピックや大阪万博が開催され、その後、高度成長の時代へ突入。インフラ整備が進み、高速道路の建設やモーターリーゼーションの発達がラブホテル繁栄の大きな要因となった。その頃よりラブホテル一筋のクリエーターとして30年間造り続け、1600棟余を世に送り出した。

世の中のニュース・事件・出来事を部屋のデザインに反映し、ハマコーのラスベガス賭博事件の時はルーレットの部屋を造った。宇野総理事件の時は芸者のベッドに土井たか子のスーパーマン、佐川急便事件の時は飛脚のトラックをベッドにし「永田町疑惑の部屋」やアニメが流行れば銀河鉄道999の白い汽車が部屋の中を走る。はたまた宇宙船艦ヤマトであったり、今は亡き、ダイアナ妃ご成婚の時は等身大の白い二頭立の馬がお召し馬車を引きロンドン市街の星座輝く夜空の下を15mも走ると言う大スケールの部屋を造った。客はこの馬鹿げた演出に度肝を抜かれ、列を成した。また、大のトラキチである私は阪神が優勝すれば必ずタイガースの部屋を造る。これが私の常道であった。時事物は風化するのが速いのではとよく言われたが、それが不思議に歴史として残り、永い人気を博した。こう言う事が私をラブホテル仕掛人と呼んだゆえんかもしれない。


部屋_SL

仕掛人とは異端児である。

異端とは、人が考えも及ばない、バカげた、変わったものを造ることかもしれない。私は、「あんな物は絶対に流行らない」と言われるバカげたものを造り続け、それが大ヒットした。私は益々自信を深め、また、造り続けた。他人はどこから私にそんなバカげたものを造るエネルギーやアイデアが湧いてくるのかとよく聞かれた。私は即座に「探究心」だと答えた。探究心がないと新しいもの、面白いものは生み出せない。ディズニーランドもラスベガスもバカバカしい物を真剣に造っている。そのバカバカしさと言うか、非日常と言うか、異次元と言うか、普通にない世界を生み出す事がラブホテルの原点と言える。


部屋_プレイボーイ

異端児とはタブーに挑戦し続けることである。

現は普通でも、その頃はタブーと言われた事が山ほどあった。
靴を脱ぎ、下足箱に預け、お盆に急須と茶菓子を持った仲居さんあとを後ろめたさを感じながらついて行ったものです。
そこで嫌な目にあった私は各部屋の写真を撮り、案内板を作り、無人化にすることを考え、客同士の対面を避けるのと同時に人件費の削減を計った。しかし、私の考えとは裏腹に「ジュータンが汚れるやろ!!」「土足とはどう言うことや」と怒号がとんできた。現は土足が普通でも当時はタブーであった。同様、ラブホテルに初めてカラオケを持ち込んだ時もそうであった。未だ、カラオケがエイトトラックの頃、「何を考えてるんや、どアホが誰があんな所で歌なんか歌うか。」クラブやバーじゃあるまいしと、笑われたもんです。ところが意に反して、これが又大ヒット、今ではなくてはならないものの一つです。タブーといわれる事を普通にするには先見の目と決断力が必要である。


部屋_白馬

楽しみながら1番になる。

「仕事は苦しんだらあかん。苦しんだら苦しい作品しか生まれない楽しんでやれば楽しい作品が生まれる。」又、「発想は遊びの中から生まれる。遊びは楽しい、楽しいことは知恵になる。知恵は仕事に繋がる」これが私の持論だ。
それと仕事は型にはまるとダメだ。型に嵌ると面白い発想が出来なくなる。私は他人が思いもつかない様な、バカバカしい空間、イヤ、思いついたとしても恥ずかしくて言えない様なものを恥ずかしげも無く造るのが私の役目だ。これを他人は、非日常的空間、異次元の世界と絶賛する。
とに角、新しいものを生み出すには「バカにされる事」と「叩かれる」事に強くなる事だ。そしてダントツでその道の一番になる事である。
二番以下はいっぱいおっても一番は一人しかいない。一番と言う誇りで仕事ができる。
一番になるにはその道の一番と付き合う事が一番の近道である。


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人間は誰でも「夢追い人」である。私は、ラブホテルの存在理由は、性の日常性からの脱出と捉えてきた。この「夢追い」の視点を「外泊産業」と命名し「外食産業」に追いつき追い越せを目標に掲げた。昔から日常の世界を”け”と言い、非日常の世界を”はれ”として捉えてきた。”はれ”とは晴れ。祭りの事である。夢とは正に性の祭り事、祭りは楽しい夢を見る事だ。ラブホテルの成功の条件は性の祭り、晴れの志向を「部屋造り」に演出する事である。


部屋_ヴィーナス

ハッピー空間。

ラブホテルの利用者は、二人のムード、SEXを盛上げる仕掛や演出があることを期待して入ってくる。シティホテルとは、全くジャンルを異にした空間。要するに夢追い志向、メルヘンの旅立ち、晴れの世界を満喫するハッピー空間を求めている。日常から逸脱し、我を忘れ、思い切り大声を張り上げ、戯れる事の出来る非日常、異次元の世界に遊ぶ「晴れ」として、セクシーな空間演出が重要である。SEXの為の舞台装置、日常からの脱出、抑圧からの解放、カップルが「まぁッ」と驚きの瞬間、不思議の国アリスの気分に浸る。それは、私が仕掛けた”はれ”への誘いだ。セクシーな遊びの国。これが燃える二人のハッピー空間となる。


部屋_パープルカラー

基本はセクシーな部屋造り

私は、性は先ず「セクシーである」ことが大前提にあると考える。甘くてセクシーな戯れごとが、人生を味わい深いものにする。ラブホテルとは、セクシーな協力者、快楽の伴走者だ。また、恋人同士が、夫婦というカップルが、男と女に戻って、二人きりの時を過ごすためのセクシーな空間である。
私は、ラブホテルの部屋でセクシー性や非日常性を強調するためには、何が必要か、極限まで考え抜いてきた。それは、言うまでもなく、統一したテーマだ。男と女が完結した時を過ごすための演出・セクシーなテーマ性のあるエロスの館だ。それに女を美しく見せる、その仕掛けが男を喜ばせ、刺激的な愛の営みに誘導する。これが私のテーマである。
装置や小道具、色使いと言ったこともテーマを盛り上げる重要なポイントである、もっと大切な要素として「音響」と「照明」を重要視しなくてはならない。「音響」や「照明」は五感を刺激し、肉体を見る想像の翼は演出を得て、羽ばたくのだ。
ラブホテルの部屋と言うのは、カップルのそれぞれが主役を演じる小劇場であり、舞台なのだ。その舞台で演技と言う疑似体験を取り入れ易く、演技を演技する、そのような楽しみ方を提供する部屋造りをしてあげることだ。


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